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Jun-26-'99 Story No133:昼下がりの街角で とんでもないものを見てしまった。このような風景は、何と形容すればよいのかわからない。今日は頭痛がひどいので、幻覚を見ているのではと思ったくらいである。男が5人、女が1人。合計6人が、道の真ん中で四つん這いになっているのだ。一体彼らは何の目的でこのようなことをしているのだろう。 動物愛護団体の連中かもしれない。しかも、「毛皮を着るな!」とか主張する、フランスの生やさしいグループとは一線を画している。毛皮云々より、殺されて動物が腐乱する方が問題だと考え、さらには「人間も動物の一部であり、動物と同等の立場に落ち着くべきだ」という、究極の愛護を考えた団体らしい。そして、所属員は4本脚歩行を義務づけられているのだ。今日は、定例集会の最中なのだろう。けれど、こんな往来の激しい道で集会を開くのはやめて欲しいものである。自転車でやってきたお兄さんも、通ることが出来ずに困っているではないか。 いやいや、そんな団体があるわけなかろう。頭の中で3番目に冷静な人格(トム)が否定した。 トム曰く、彼らはトンガ国王の側近らしい。国王はたいそう変わった人であり、側近達を大いに困らせる。そして、今回の訪日でも「ニホンヲハダシニアルイテミターイ」という、何が楽しいのかわからない希望を出してきたのだ。しかし、この国王。裸足で歩いて怪我でもしたら、怒ることは目に見えている。国王はわがままなのだ。そうなると、日本とトンガの友好関係にひびが入ることは確実である。そこで側近達は、国王に先回りして、怪我をしてしまうようなとんがっているものがないかどうか探している、というわけだ。 馬鹿なことを言ってるんじゃないよ、みんな日本人じゃないか。2番目に冷静な人格(スチュワート)がトムを窘める。 スチュワートは、これを横山やすしファンクラブだと言う。西川きよしに突っ込まれてめがねを落とし、四つん這いになって「めがねめがね」と探す例のアレに魅せられた人々だ。このお約束は国を越えて支持者がいるらしく、ジャマイカにも会員がいるらしい。とにかく彼らは、場所を選ばずその行為を繰り返す。今日もそれを行っているのだ。しかし、それは屋内でやってくれないだろうか。道でやるのは迷惑この上ない。まぁ、日本人以外の会員が外国でやるんじゃ、「ま、いいか」という気分にもなるのだろうが。 どこにもめがねは落ちてないぞ。一番冷静な人格(きよひこ)が、すかさず突っ込みを入れた。 コンタクトを探しているに決まっているじゃないか。しかも、落としたのは女性である。よくよく見てみたら、女性はかなりの美人だ。この女性が困っているのを見て、男性がわらわらと集まってきたのであろう。ほら、男性の目は真剣そのもの。コンタクトを見つけることが出来れば、「ありがとうございます。お礼がしたいんですが…」などと、美人のおねいさんとお近づきになれると期待しての行動だろう。 しかし、こういう場合は、お礼だけ言われてさようなら、ってパターンだから、お前は参加しちゃ駄目だぜ。 きよひこに忠告されたのだが、一番女好きな人格(名前なし)はそんなことを聞いちゃいなかった。 結局、その団体に近づいて、男の一人に話しかけたのである。 「コンタクトですか?手伝いますよ」 男に話しかけたのは計算である。最初におねいさんに話しかけると、下心が丸見えだからだ。あくまで、「困っている人を助ける」というスタンスでいかねばならない。 「えぇ、助かります」 僕も四つん這いになって探しはじめた。そして、念のため男に話しかける。 「すごい人数で探してますけど、誰が落としたんですか?コンタクト」 「全員です」 「へっ?」 「あなたを除く6人は、みんなコンタクトを落としているんですよ。しかも両目の」 あらららら、何だここは。魔のコンタクト落下地帯であろうか。僕はコンタクトをしていないため、落とす心配はないのだが、一体どういうことなのだろう。 まぁ、それはどうでも良い。とにかく、おねいさんと知り合いになるために、全員のコンタクトを見つけるつもりで探すぞ。僕は気合いを入れて右手を前に出した。 パリン。 あ、やってしまった!6人が一斉に僕の方を向いて睨み付ける。あ、あ、わざとじゃないんだよ。慌てて右手をどかして、別な場所に置く。 パリン。 あ゛。6人の表情が更に険しくなる。僕は視線が怖くて、右手を大きく上に挙げた。すると、勢い余って、体が後ろにのけぞる。僕は両手をついて体を支えようとしたが、しりもちを付いてしまった。パリンパリンパリン。尻と両手で3つの何かを潰してしまったようだ。しかも勢いは止まらず、後ろに倒れてしまう。パリンパリンパリンパリンパリンパリンパリン。 ええと、みなさんよかったですね。これで、12枚割れたので、探す必要がなくなりましたよ。あははは…駄目?ですよね。 「ごめんなさい!」 「どうしてくれるんですか?弁償して下さい」 6人を代表して、おねいさんに責められている僕。ああああ、仲良くなるどころか、完全に嫌われてしまったではないか。しかも、6人分のコンタクトを弁償するなんて、貧乏な僕にはとても出来ない。 「貧乏なんで、弁償できないんです。なんでもしますから、弁償は勘弁してもらえませんか?」 僕は懇願した。すると、おねいさん。にっこり笑ったではないか。そして、後ろの5人の男性からも怒りの表情が消えた。そして、おねいさんは話し出す。 「それなら、私たちが加入している動物愛護団体に入って下さい。私たちのグループは原点回帰を目指して“人間も四つん這いで歩く”という団体です。とりあえず、あなたの名前をどうか教えて下さい」 最新の目次へ
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